飛行機写真の構図にはさまざまなものがありますが、
なかでも最も定番なのが、『スポッティング写真(スポッティングカット)』と呼ばれる、飛行機を真横から撮った写真。
スポッティング写真は地味ですが、確実に撮れるようになりたい基本の写真です。
今回はそんなスポッティング写真について、カメラの設定やスポッティング写真の条件、気をつけたい点などを紹介します。
もくじ
スポッティングとは
スポッティング
飛行機撮影の構図の中でも、基本中の基本といえるのがこのスポッティングカット。
簡単にいうと、機体を真横から撮った写真のことで、登録記号(レジ)やカラーリングを記録する時に撮りたい写真ですね。
今でこそスポッティングというとスポッティング写真を撮ることをいいますが、
昔は登録番号を双眼鏡などで確認し、それをノートに記録することをスポッティングと呼びました。
スポッター
スポッティングは昔からある飛行機趣味のジャンルのひとつで、スポッティングを趣味としている人達のことをスポッターと呼びます。
海外のスポッターだと、今でも写真を撮らずに双眼鏡で飛行機を確認して、登録番号をただノートに書くだけっていう人も結構いたり。
私には何が面白いのかまったくわからないんですが、熱心なスポッターから言わせると機体の歴史や運用を追いかけ、思いを馳せるのがたまらないとか。マニアの鏡ですね。
コレクターの世界(回収)
スポッティングカットは機体を真横から撮影することでどの機体も同じように撮れるため、記録写真向け。
よく趣味というと、記念硬貨や切手などの物集めの世界がありますが、飛行機においても、いろんな航空会社・機種・塗装などがあり、収集癖が刺激されます。
コレクター性が高いので、狙っていた機体が撮れた時なんかは最高ですね。
特別塗装や珍しい機体などが来た時などは、必ず撮っておきたい写真です。
そんな収集心が刺激されるスポッティング写真ですが、集める意味合いが強いことから、狙っていた飛行機が撮れた時のことを、『回収』と呼んだりします。
ということで、実際の飛行機を集める記録写真的な意味合いが強いのが、このスポッティング写真です。
- 飛行機撮影の基本となる写真
- 機体番号(レジ)・塗装を記録
- 記録写真として最適
スポッティング写真(カット)の撮影条件
スポッティング写真の条件は、人によってそれぞれちょっと違うと思うんですが、
僕の中でのルールはこんな感じ。
- 逆光ではないこと(曇りや夜間でもOK)
- 機体真横から撮影
- 機体全体が入っていること
- レジがしっかりとわかること
- 撮影場所がわかること
- 機体の手前に被りがないこと
個人的に重要視したいのが、写真を見たときに一目でその場所が特定できるかどうか。
空中の場合は、背景が入ってないと、どこで撮影したかわからないですからね。
たとえば下の方に木が若干写っていたとしても、ありきたりな木で撮影場所の特定が困難な場合は、スポッティング写真としてはNG。
条件を決めて撮影すると、意外と奥が深いのがスポッティング写真です。
実際の写真を見ながら、説明していきます。
まずはOKな例から。
OK例
まずは文句無しな写真から。
この写真は、真横からの撮影でエンジンやギヤも揃ってますし、機体全体が入っており、レジもくっきり。
背景も写っているので、撮影場所の特定も可能。
光線も順光で、機体の下まで光が周ってます。
目線の高さからの撮影でもあるので、個人的には文句無し。
これはスカイショットですが、背景が写っており、撮影場所の特定ができるのでOK。
この写真は後ろに他の機が被ってしまっていますが、前に被っていないので、まぁギリギリOK。
個人的には、後ろ被りもできれば避けたいところ。
夜間の写真でもちゃんと写ってれば僕的にはOK。
逆光はNGですが、曇りや夜間なら塗装がはっきりとわかるのでOKです。
晴天・順光に限定すると、撮れないことも多いですからね。
逆噴射中ですが、これもOK。
トーイングカーが付いている機体などもOKです。
離陸上昇中で、機体は水平ではありませんが、しっかりと背景も写ってますし、真横から目線の高さの写真なので、これもOKです。
次はNG写真を紹介します。
NG例
これは真横から撮影できていますが、背景が写っておらず、どこで撮影したのかわからないため、NG写真。
記録写真という性質上、個人的には撮影場所の特定が可能か?という点が重要です。
これは左下に木が写ってはいますが、ありきたりな木で、これだけでは撮影場所の特定ができないため、NG写真。
機体の手前にコンテナが被ってしまっているので、これもNG写真。
曇りや夜間はOKですが、逆光の場合はNG写真。
逆光だと機体が影になってしまい、機体の塗装やディテールがわからないということで、NG写真です。
この写真はOKなようにも見えますが、よく見てみると機体番号がウイングレットに隠れてしまっているため、NG写真。
カンタスジャンボは、機体番号の位置がちょっと微妙なんですね。
上からやや見下ろすように撮らないと、機体番号が被りやすくスポッター泣かせです。
この写真は機体全体が写っており、レジもくっきりですが、真横からの撮影ではないためNG写真です。
とこんな感じで、スポッティング写真のルールを決めて撮影しています。
これはあくまでも僕の条件なので、正解はありません。
ルールを厳しくすれば回収は難しくなりますし、許容できる範囲でルールを決めて、撮影やコレクションを楽しみましょう!
スポッティング写真の撮影方法
次は実際にスポッティング写真を撮影する方法を紹介します。
スポッティング写真は飛行機撮影の基本
スポッティング写真は、撮影技術的にも基本となる写真。
タクシング中はゆっくりなので簡単そうに見えるんですが、レンズを通してみると以外と速かったします。
両ギヤや両エンジンが重なった時を狙おうとすると、頭やお尻が切れたり、機体が小さくなりすぎてしまったというミスをすることも多め。
反対に機体がちょうどいいサイズに入るようにと考えていると、真横を通り過ぎてしまったりということもあり、なかなか奥が深いんですよね。
ということで、まずはスポッティング写真がしっかりと撮れるようになりたいですね。
カメラの設定
スポッティング写真を撮影する時のカメラの設定は、
- シャッタースピード 1/500〜1/1,000
- 絞り F5.6〜9
- ISO 100〜400
立体感や動きのある写真と違い、真横からの撮影で遠近感はない写真なので、F値はそこまで絞る必要はありません。
それよりも、手ブレで登録番号がブレたりしないように、またエンジンがしっかりと重なったタイミングを捉えられるように、シャッタースピードを上げることを意識しましょう。
ゆっくりに見えるタキシング中でも、大口径のズームレンズで撮影すると、意外とブレたりするもの。
手ブレしないシャッタースピードは、最低でも焦点距離分の1秒と言われているので、400ミリのレンズではあれば1/400秒以上に、600ミリであれば1/600秒は最低でも必要です。
ISOは400くらいまでであれば、ほとんど画質に影響はないため、日中でも上げてOK。
特に失敗できない写真であれば、F値やISOよりも、シャッタースピードを基準に設定しましょう。
実際に撮影
それでは、実際にスポッティング写真を撮影してみましょう。
カメラの設定は、シャッタースピード1/1000秒、F8.0、ISOオートに設定しました。
ISOをオートにしておくと、カメラの方で適切な露出に合わせてくれるため便利です。
飛行機が真横に来る少し手前からシャッターを切り始めましょう。
ワンショットで撮ってもいいですが、真横を厳しく狙うなら連写で撮った方が確実。
真横かどうかを正確に確認するには、ランディングギアやエンジンを見るとわかりやすいです。
上記の写真の場合は、シャッターを切るのがまだ早かったパターン。
左右のエンジンやギアがズレているのがわかりますね。
これは完全な真横で、スポッティング写真としてバッチリな写真。
エンジンやギアを見てみると、左右のエンジンやギアがピッタリと重なってるのがわかると思います。
スポッティング写真で狙いたいのがこの位置。
そのままシャッターを切り続けるとこんな位置に。
ランディングギアやエンジンを確認すると、真横を通り過ぎて左右がズレているのがわかりますね。
こんな感じでギアやエンジンに注目すると、ピッタリ真横の位置を判断するのにわかりやすいです。
真横を狙って早めにシャッターを切るのを止めると、後で確認してみると真横手前だったということがよくあります。
真横を通り過ぎたかな?と思うあたりまでシャッターを切り続けると失敗することが少ないですね。
飛行中の飛行機はタキシングよりも速いので、やや難易度は高く感じますが、タキシングと同じように撮影すればOK。
慣れてくれば、タキシングと同じ感じで撮れます。
真横の判断は、タキシングと同じく、エンジンやギアの位置で確認しましょう。
スポッティングの楽しみ方
スポッティング写真はただ撮るだけでも楽しいですが、目的を持って集めるとさらに楽しみが広がります。
例えば以下みたいな感じ。
- 好きな航空会社の機体を全機収集
- 好きな航空会社の保有機材を機種別に収集
- 色々な航空会社の好きな機種を収集
- 遠征先でレアな航空会社を収集
- スペマ集め
こんな感じで、集めてみるのも楽しいですね。
目標を決めると集めるのは大変ですが、全部コレクションできた時の嬉しさは格別です。
スポッティングに適した場所
スポッティングに適した場所の定番といえば、やはり各空港にある展望デッキ。
撮影環境もいいですし、気軽に撮影できるのが魅力。
ただし展望デッキは高い位置にあるので、少し見下ろすような感じになってしまうことも多いですね。
こだわるなら、目線の高さで撮れる場所がやっぱり良いポイント。
成田のゲジポイントや、スキポールのポルダーバーンスポッターズスポットなど、日本や世界には有名なスポッティングスポットがたくさんあります。
スポッティング写真まとめ
スポッティング写真は、飛行機写真の中では最も地味な写真ですが、狙った飛行機で確実に撮りたい写真は?と言われれば、なんだかんだでスポッティング写真。
飛行機撮影の中でも基本の写真ですし、色々と目的を持って撮影すると、それぞれ楽しみも広がりますよね。
スポッティング写真を極めて、ぜひ回収の楽しみに目覚めてみてください。