飛行機ファンにとって航空博物館はいくつになってもワクワクするものですよね。
今回紹介するイギリス空軍博物館(ロイヤルエアフォースミュージアム)は、第1次世界大戦の頃から現代までのイギリスで活躍した飛行機が展示されている、飛行機ファンにはたまらない航空博物館です。
特に第2次世界大戦時の飛行機は、イギリスだけでなく、ドイツ、アメリカの機体も展示されており、ピストンエンジン黄金期の機体が勢ぞろい。
ジブリ映画の風立ちぬや、紅の豚など、現代の飛行機よりもピストン機にロマンを感じる人は必見ですよ!
もくじ
イギリス空軍博物館はロンドンからすぐ。無料で楽しめる豊富な展示は航空ファン必見
イギリス空軍博物館は、ロンドン中心地から地下鉄に乗って40分ほどのところにある、イギリスの航空博物館です。
日本では見ることができない機体が数多く展示してあり、時間が経つのを忘れてしまうほど。
イギリス空軍博物館の魅力
- 第1次世界大戦から現代までの豊富な展示機
- 見どころは第2次世界大戦期に活躍した飛行機!英・独・米の名機が勢ぞろい
- 無料で楽しめる
イギリス空軍博物館の魅力は、なんといってもその豊富な展示機。
館内は大きく分けて3つのハンガーに分かれ、各館内はテーマに沿った飛行機が展示されているんですが、その規模は日本にある航空博物館とは比べ物にならないくらい。
リアルに格納庫と呼べるような広大な館内には、なんと戦略爆撃機などの超大型機まで展示されているんです。
特に第2次世界大戦時に活躍した飛行機は充実しており、イギリスが誇る名機『スピットファイア』や、ドイツ第三帝国の防空を支えた『メッサーシュミット』、アメリカ陸軍の最高傑作『マスタング』などは、絶対に見ておきたい飛行機ですね。
さらにすごいことに、イギリス空軍博物館はこの規模、このクオリティーなのに、なんと無料なんです。イギリス懐が深すぎるわ。
ということで、往年の名機たちが現代に蘇るイギリス空軍博物館は、飛行機好きならロンドンに来たら立ち寄りたいスポットです。
イギリス空軍博物館の各館内と見どころ
それではイギリス空軍博物館の館内を、見どころとともに紹介したいと思います。
館内探検レッツゴー。
イギリス空軍博物館に入って最初に出迎えてくれるのが、イギリスが誇る第2次世界大戦時の主力戦闘機スピットファイア。
旧式構造のホーカーハリケーンとともに、イギリスの防空を支えました。
映画『ダンケルク』の中で、ムーン・ストーン号船長のドーソンが言ってたように、ロールスロイス製のマーリンエンジンを搭載しています。
空軍博物館は1〜6館まであり、大きく3つのハンガーに分かれています。
イギリス空軍博物館1・2号館
まずは1、2号館から見ていきましょう。
1、2号館はイギリス空軍100年の歴史を紹介するようなフロア。
こちらの館は展示機よりも、タッチパネルや映像など体験型のものや、装備品の展示など、イギリス空軍の歴史を楽しく学べるようなものが多い印象ですね。
中に入ると女性兵士の等身大パネルがお出迎え。
リアルがすぎる!
複葉機からF-35のモックアップまで。
さらにはヘリや車両など、イギリス空軍で使われた様々なものが展示されています。
こちらはF-35の模型。
よ〜く見てみると、セロハンテープやメジャー、カッター、ペン、クリップなど、いろんな文房具や工具を集めて作られていました。
そしてこの館の一番奥にあるのがこれ、第二次世界大戦時に使用されたイギリス軍の大型飛行艇、ショートサンダーランド。
こんなに大きな機体が海面から離陸できるなんて、ちょっと信じられないですよね!
ここにはカフェもあり、ショートサンダーランドを眺めながらコーヒーを楽しむことができます。
ショートサンダーランドが飛んでいた時代に想いを馳せながらのティータイムは、会話が弾むこと間違いなしですね。
そしてショートサンダーランドの内部は見学可能。機体後方に設置されている階段から中に入ることができます。
コクピットは行けないんですが、機体後方から前方まで見学できます。
イギリス空軍博物館3・4・5号館
イギリス空軍博物館でメインとなるのが、この3、4、5号館。
第二次世界大戦時に活躍した機体を中心に、数多くの機体が展示されています。
中に入ると驚くのがこの広さ。
いくつもの機体が並べられた館内は、まるで格納庫ですね。
膨大な展示機を全部紹介するのは難しいので、その中から私が気になったものをご紹介します。
まずはホーカーハリケーン。スピットファイアとともにイギリスを代表する戦闘機で、開戦時から終戦まで活躍しました。
ハリケーンは全金属製の最新鋭機スピットファイアと比べると、プロペラは木製、機体外板の3分の1が羽布張りと旧式感は拭えませんが、修理が簡単という利点もありました。
次はホーカータイフーン。
大戦初期に登場した、爆弾も搭載できる戦闘爆撃機です。
元々は、先ほど紹介したホーカーハリケーンの代替えとして開発された機体だったんですが、対戦車などで威力を発揮し、地上部隊に対する近接航空支援を行う戦闘爆撃機として活躍しました。
ネイピア製セイバーエンジンを搭載しています。
こちらは先ほど紹介したホーカータイフーン改良型のホーカーテンペスト。
速度が速かったため、現在の巡航ミサイルの元祖であるドイツ軍が開発したV-1飛行爆弾の迎撃にも使われました。
写真はネイピア製セイバーエンジンを搭載したMkV型です。
こちらは同じホーカーテンペストのMk II型。
同じテンペストなのに、MkV型と比べて全然違う飛行機に見えませんか?
これはテンペストの中で唯一、ブリストル製のセントーラスエンジンを搭載しているから。
エンジンカウル周りが違うと、全然別の飛行機に見えますね。
ホーカーテンペストMk II型は最高速度711km/hと、同時期に登場した戦闘機の中で、トップクラスの速度を誇っています。
こちらは第二次世界大戦中、全期間を通して活躍したイギリス軍の主力戦闘機スーパーマリン スピットファイア。
日本の零戦のような、イギリス軍の象徴となるような戦闘機ですね。
様々な改良型が存在し、艦載機バージョンもあります。
大戦前期は、ロールスロイス製マーリンエンジンを搭載、後期はグリフォンエンジンを搭載し、最高速度も700km/hを超えるほどに。
ちょっとここで少しエンジンを。
こちらが後期のスピットファイアに搭載されていた、ロールスロイス製の12気筒液冷V型グリフォンエンジン。
エンジン周りに注目してみるとわかりますが、イギリス軍機やドイツ軍機は、スピットファイアのようにシュっとしたエンジンカウルの機体が多いんですが、これはV型エンジン搭載機の特徴。
対して、こちらはブリストル製9気筒空冷星型ジュピターエンジン。
V型エンジンと違ってシリンダーが星型に並んだ、特徴的な形をしていますよね。
こちらはブリストル製18気筒空冷星型センターラスエンジンを搭載したホーカーテンペストMk II型。
この機体は零戦やコルセアのような、太いカウルをしていますよね。
これはV型エンジンでなく、星型エンジンを搭載しているから。星型エンジンは日本軍やアメリカ海軍機に多いです。
機体だけでなくエンジンに注目してみるのも面白いですね。
こちらはスピットファイアのXVI型。
XVI型はアメリカでライセンス生産されたマーリンエンジンを搭載しています。
ドイツ軍のV2ロケットのサイトや、飛行場を攻撃するための戦闘爆撃機として使用されました。
イギリス空軍博物館には、他の国の機体も展示されています。
こちらはアメリカ陸軍の戦闘機P-47サンダーボルト。アメリカ軍の主力戦闘機のひとつで、この展示されている機体はラングーンやマンダレーなどビルマ方面で活躍。
サンダーボルトは戦闘機ですが、500ポンド爆弾を搭載することができ、時にはB-24爆撃機の護衛も行うなど、爆撃機や戦闘機として日本軍を苦しめました。
プラット・アンド・ホイットニー製18気筒空冷星型R-2800エンジンを搭載しています。
スーパーマリン製ストランレア飛行艇もありました。
1、2号館にあるショートサンダーランドと比べると小さいですが、それでも大きい!
複葉機という事で、第二次世界大戦時はすでに時代遅れの機体でしたが、デザインとしてはロマンがありますよね。
第二次世界大戦時、イギリスとドイツの戦いは空の戦いといっても過言ではありません。
ドーバー海峡を挟んだイギリスとドイツの空での戦い、それがバトル・オブ・ブリテンです。
イギリス空軍博物館には、バトル・オブ・ブリテンを戦ったドイツ軍機も展示されています。
こちらはナチスドイツ軍の誇る主力戦闘機、Bf109 メッサーシュミット。
イギリスならスピットファイア、日本なら零戦、ナチスドイツはメッサーシュミットというように、象徴的な戦闘機です。
開戦当初から改良を重ね、終戦まで活躍しました。
ダイムラー・ベンツ製12気筒水冷V型DB601エンジンを搭載しています。
機体に描かれたドイツ国防軍の鉄十字や、ナチスドイツのシンボル、鉤十字(ハーケンクロイツ)がインパクトありますね。
ここに展示されているのは戦闘機だけではありません。なんと爆撃機まで展示されているんです。
私、爆撃機好きなんですよね。特に好きなのが、この時代の爆撃機。
THE BLUE HEARTSという中学の頃から好きだったバンドがあるんですが、そのブルーハーツの中でも一番好きな曲が、『月の爆撃機』という曲。
この曲に出逢ってから、爆撃機が特別な存在になった気がします。
という事で、最初に姿を見せてくれたこの4発エンジンの大きな爆撃機は、イギリス軍の大型爆撃機アブロランカスター。
スピットファイアと同じロールスロイス製のマーリンエンジンを搭載した、このアブロランカスターの任務のひとつが、B-17が昼間爆撃を行った目標に対する夜間爆撃。
昼も夜も四六時中爆撃される方のドイツからしたら、たまったもんじゃなかったと思います。
こちらはイギリス軍の軽爆撃機ブリストルブレニム。
戦争初期から活躍した機体だったんですが、速度が遅く、防御火力も弱いことから、撃墜されるリスクの高い機体でした。
機首上部にある右側の窓の部分がえぐれているのが特徴的ですが、これはパイロットの視界を確保するためにこういった形になっています。
続いてこちらは、ナチスドイツ軍の急降下爆撃機、ユンカースのJu87 スツーカです。
ポーランド侵攻を描いた映像などで、よく登場しますよね。
小さな飛行機ですが、戦争初期の電撃戦であるポーランドやフランスへの侵攻の際に絶大な成果を発揮し、急降下中に聴こえるサイレンのような音はジェリコのトランペットとして恐れられました。
戦車ハンターとしても有効で、この機体の近接航空支援により、ドイツ軍の侵攻を支えました。
同じくナチスドイツ軍の爆撃機、ハインケル He111中型爆撃機です。
この機体も戦争初期の頃は活躍しましたが、速度、防御力が低く、昼間爆撃では多くの機体が撃墜されてしまったため、中盤以降は夜間爆撃や偵察機、輸送機として使用されました。
イギリス空軍博物館で見逃すことのできない機体がこの戦闘機、P-51マスタング。
ボディに描かれたドナルドダックからわかる通り、アメリカの戦闘機ですね。
ノースアメリカン製のマスタングは元々優秀な機体でしたが、イギリスのロールスロイス製マーリンエンジンを搭載してみると、驚くべき性能を発揮したため、マーリンエンジンを搭載することに。
スピットファイアと同じマーリンエンジン搭載したマスタングは、イギリスとアメリカのシンボル的な存在になるとともに、第二次世界大戦で最も成功した戦闘機となりました。
こちらはイギリス軍のデ・ハビランド製モスキート戦闘爆撃機。スピットファイアやマスタングと同様、マーリンエンジンを搭載しています。
実はこの機体、ほとんど木でできているんですよね。
木製の飛行機って聞くと時代遅れのような気もしますが、金属製戦闘機と比べてレーダーに探知されにくいという利点もありました。
そのため、ダムやロケット基地など、重要な拠点に対する爆撃にも使用されています。
続いて紹介するのは、アメリカ軍の主力中型爆撃機爆撃機、ノースアメリカンのB-25 ミッチェルです。
アメリカ軍の爆撃機だと日本を空襲したB-29が圧倒的に有名ですが、実は日本本土を初めて空襲したのはこのB-25が最初。
ドーリットル空襲と呼ばれる日本本土への初空襲は、なんと空母ホーネットから発艦したこのB-25が行いました。
映画パールハーバーでこのシーンがありましたね!見たことがある人もいるんじゃないでしょうか。
艦載機でも無いこんな大きな爆撃機を空母から発艦させるなんて、アメリカ軍も大胆です。
そしてこのB-25の特徴は前輪があること。
イギリス軍やドイツ軍の爆撃機は尾輪式と言って後部にギアがあるタイプで、古い機体に多いデザインなんですが、B-25は前輪式で、現代の飛行機はほとんどがこの前輪式です。
B-25はデザインも最先端だったんですね。
こちらもアメリカ軍の爆撃機ですが、めちゃめちゃ大きいですね。4発エンジンなんですが、広角レンズを使っても画角に収まらない大きさ。
これはアメリカ軍の主力大型爆撃機、ボーイングのB-17 フライングフォートレスです。通称、空飛ぶ要塞ですね。
空飛ぶ要塞という名前からわかるように、防御火力が強力で、ドイツ軍に対する昼間戦略爆撃に使われました。
速度も速く、排気タービン搭載で高空性能も優秀と、まさしく爆撃機の中の爆撃機です。
機体の外板の無機質なリベットが非常にかっこいいですね。
銀色に輝くボディに大型4発エンジンを備えたB-17のフォルムは、空飛ぶ要塞の名前がぴったりです。
ほかにも、冷戦時代に登場した戦略爆撃機、バルカンなども展示されています。
イギリス空軍博物館6号館
6号館には、第一次世界大戦の時代に活躍した機体や、現代の航空機が展示されています。
こちらが第一次世界大戦のゾーン。
どうでしょう!紅の豚や風立ちぬの世界観を感じずにはいられないですよね。
第一次世界大戦から第二次世界大戦まではわずか25年ほどしか経っていませんが、先ほどの第二次世界大戦のゾーンで展示されていた飛行機と比べると、デザインが大分違いますね。
この時代に飛んでいた飛行機は、主翼が2枚以上ある複葉機が主流。
主翼もアルミニウム合金でなく、まだまだ布の時代でした。
プロペラにも金属でなく木が使われています。
さらにこの時代のプロペラは、角度の変えられない固定ピッチ。
第二次世界大戦頃になると、飛行の状態に合わせてプロペラの角度を変えることができる、可変ピッチプロペラも登場しました。
戦争の歴史は人類の歴史とも言ったもので、良いのか悪いのかはわかりませんが、こうやって飛行機だけを見ても、国家の存亡を賭けた大きな戦争は技術力を飛躍的に進歩させる事実があることも感じます。
現代の私たちにも欠かせないカーナビなどに使われるGPSや、インターネット、電子レンジなども軍事的な研究から産まれたものですし、色々と考えさせられますよね。
横には現代をテーマにしたゾーンもあります。
ここにはタイフーンやトーネード、ハリアーなど、現代のイギリスを代表する戦闘機などが展示されています。
イギリス空軍博物館のアクセス方法・営業時間
場所と行き方
イギリス空軍博物館があるのは、地下鉄ノーザンラインColindale駅から徒歩で約12分のところ。
ロンドン市内からは地下鉄で約40分の距離です。
イギリス空軍博物館の最寄り駅は、地下鉄ノーザンラインのColindale駅。地下鉄といってもColindaleは地上の駅ですね。
Colindale駅の改札を出ると、こんな景色。
駅を出たら、左へ道なりに進みましょう。RAF Museum(イギリス空軍博物館)の看板もありますね。
そのまましばらく道なりに進みます。ちなみに博物館は道路の右側にあるので、右側の歩道を歩くと楽。
道沿いにはRAFの旗や看板が断続的にあるので、迷うことはないと思います。
途中ラウンドアバウトがありますが、横断歩道を渡ってそのまま道なりに進みましょう。
ラウンドアバウトを通り過ぎたらこんな道に。ここまで来ればもうすぐです。
イギリス空軍博物館が正面に見えてきましたね。
こちらがイギリス空軍博物館。横にある入り口から中に入りましょう。
営業時間
営業時間
- 10時〜18時
イギリス空軍博物館まとめ
イギリス空軍博物館は、イギリス空軍の全てを詰め込んだ魅力的な博物館でした。
日本では見ることができない多くの展示機を無料で楽しめますし、飛行機に興味があるならぜひ、この博物館でイギリス空軍の歴史に触れてみてください。
ピストンエンジンは男のロマン!